スパでの癒し時間をより印象深いものとしてくれるのが香りの存在です。ただ好みで選ぶのではなく、空間や施術内容、その日の気分や体調に合わせて香りを選ぶことが、スパ体験の満足度を大きく左右します。 本コラムでは、初心者でも迷わない香り選びのポイントや香りの種類およびその特徴、拡散方法の違いなどをご紹介いたします。
香りは空間の印象づけと施術効果の下支えを担います。香りの選び方次第で体験全体の評価が変わると言ってよいでしょう。
空間に入った瞬間に感じる香りは、その場所の印象を決定づける大切な要素です。香りは人の記憶や感情と深く結びついており、特定の香りが過去の記憶を鮮明に呼び起こす「プルースト効果」という現象もあります。
例えば、ヒルトン東京では日本の緑茶を思わせる「センチャ(煎茶)」の香りで落ち着きのある爽やかな空間を演出し、ウェスティンホテルでは「ホワイトティー」というオリジナルアロマを世界共通で採用することで、一貫したブランド体験を提供しています。
このように、体験に心地よい香りが伴うことで顧客の記憶に深く刻まれやすくなるのです。その結果、ブランドへの印象アップや愛着の形成につながり、リピート率の向上に貢献します。
エッセンシャルオイルは、香りを楽しむだけでなく施術の効果をさらに高めてくれる効果があります。そのため、トリートメントの内容や目的に合わせて香りを選ぶことが重要です。
例えばフェイシャルトリートメントには、肌の弾力を取り戻し、乾燥肌や敏感肌などあらゆる肌質のケアに適しているネロリがおすすめです。
ヘッドスパでは、頭皮をすっきりさせたいときには清涼感のあるペパーミント、フケや乾燥が気になるときにはシダーウッドなど、頭皮の状態に合わせて選択するといいでしょう。
同じ香りでも、体調や気分で感じ方は変化します。毎回の簡単なカウンセリングで、その日にぴったりな香りを見つけることが大切です。
まずは「よく眠れているか」、「今日はどんな気分になりたいか」など、その時の身体の悩みや心の状態を把握しましょう。施術の目的に合わせて2〜3種のエッセンシャルオイルを提案し、実際に嗅いで心地よいものを選びます。香り選びに参加してもらうことで、オーダーメイドのような満足感が生まれます。肌が弱い方向けのメニューや香りを使用しないオプションも用意しておくと安心です。
エッセンシャルオイルが持つ効果を利用し、利用者の目的や気分に合わせて香りを選ぶことで、より満足度の高い体験を提供できます。
心身をリラックスさせたい場合や安眠効果を得たい場合は鎮静効果のあるラベンダーや不安や緊張を和らげてくれるベルガモットが適しています。気分を切り替えてリフレッシュしたい時や、集中力を高めたい時には、レモンやミント(ペパーミント)などの爽やかな香りが適しています。
また、精神を安定させ幸福感を高めたい場合には、華やかで官能的な香りのイランイランもおすすめです。
選定した香りを効果的に空間へ拡散するためには、アロマディフューザー選びも大切です。アロマディフューザーには様々な方式があり、ここでは代表的な4つのタイプをご紹介します
エッセンシャルオイルの原液を微粒子にして、空間へ噴霧する方式です。オイル本来の香りをそのまま楽しめ、拡散力も高いためロビーや広いラウンジといった空間全体にしっかりと香りを届けたい場合に適しています。
水を入れたタンクにエッセンシャルオイルを数滴垂らし、超音波の振動でミスト(霧)を発生させて香りを拡散させるタイプです。作動音が静かなことに加え、ミストによる加湿効果が期待できるため、施術室やリラクゼーションルームなど、落ち着いた空間に向いています。
エッセンシャルオイルを染み込ませたパッドに風を当てて気化させるタイプのほか、素焼きの石などにオイルを垂らすアロマストーンや、スティックがオイルを吸い上げて香りを広げるリードディフューザーもこの方式に含まれます。香りの広がりは穏やかで拡散範囲も狭いため、個室やパウダールームといった狭いスペースでの使用に適しています。
受け皿に垂らしたエッセンシャルオイルを温め、その成分を揮発させて香りを広げるタイプです。火を使わない電気式のものが多く、操作がシンプルで扱いやすいのが特徴です。香りは穏やかに広がるため、個室や枕元など、パーソナルな空間で香りを楽しみたい場合に適しています。
プールやジャグジーなどにエッセンシャルオイルを加えてしまうと、水に混ざりにくく油膜が張ってしまったり設備を傷めてしまったりする恐れがあります。そのような時は水用のフレグランスであるウォーターパフュームがおすすめです。KIKAOのウォーターフレグランスの場合は液体タイプなので、プールやジャグジーの中に適量を混ぜるだけで空間を香りで包むことができます。
香りの種類も豊富で、施設のコンセプトに合ったものを選びやすい点も魅力です。
KIKAOのウォーターフレグランスについて詳しく知りたい方は、ぜひ以下のページもご覧ください。
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季節の移り変わりに合わせて、その季節に盛りを迎える花の香りに替えることで、四季の移ろいを楽しみながら心地よく過ごすことができます。
暑さを感じる春夏には、体感温度を下げてくれるような清涼感のある香りがおすすめです。スーッとした清涼感のあるペパーミントや、まるで森林浴をしているような気分を味わえるヒノキの香りは、気温の高い季節を心地よく過ごすのに役立ちます。
一方、寒さを感じる季節には心と体を温めてくれる香りが好まれます。柑橘系の中でも体を温めると言われるオレンジやシナモンのようなスパイス系の香りは、心をポカポカとさせてくれます。
香りは空間の印象を形づくり、施術の効果をサポートします。その日の気分や体調、施術内容、季節などに合わせて香りを選ぶことで、スパでの体験がより心地よく、深く印象に残るものになります。
香りに敏感な方への配慮や、アロマディフューザーの使い分けといった細やかな工夫が、信頼や満足感につながる一歩にも。
これからスパに香りを取り入れたいと考えている方は、まず「誰に向けた香りなのか」を考えることから始めてみてはいかがでしょうか。香りとともに届けられる癒しの時間が、訪れる人の心に静かに響いていくはずです。
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